前職を辞め、クラウドでデザインの仕事を始めた矢先、義父が病気で手術するとの知らせを聞きました。

手術は成功し回復しましたが、体力も落ち、手術したことで気力も萎えたことで、麹作りを辞めるかもしれないと知りました。

長年続けてきた麹作り、味噌作り(近所の方や、知り合いの方のみ)をこのまま途絶えさせるのは勿体ないと思い、技術を継承しようという考えから、義父に「手伝うので続けませんか?」と言ったところとても喜び、教えて頂くことになりました。

まず米の量を計るところから始めました。はちどり味噌では、当時も今も1回当り15kg×4ロットの計60kgを仕込んでいます。

当時は、1斗樽を使用して、4斗で仕込んでいました。

ちなみに今は電子計りを使っていますが、当時は、木をくり抜いた形状の1斗樽と、大型の天秤計りで仕込むお米や大豆を計っていました。

重量を正確に測った場合と比べ、仕込んだ後の出来上りにムラが大きい為、1斗樽と天秤計りを使うのはやめましたが、どちらも年代物で義父の前の代から使用死ている物なので大切に保管しています。

店用を仕込む場合は良いのですが、お客さんのお米を麹に仕込む際は、持ち込んでいる米の量がまちまちなため、組み合わせて仕込む必要があります。

その場合に約5升が2件で1斗とした場合、実際は9升であったり、1斗1升であったりと正確に計れないため最終的な出来上りにムラが出来ていました。

また、組み合わせで仕込んだ場合、出来上りを分ける際に7升と3升などの場合、およその量でしか分けれないということも、電子計りを導入した理由のひとつです。

当時は、組み合わせで仕込んでいることを伝えていませんでしたが、はちどり味噌開業後は15kg単位での仕込みとなっていること。

それに満たない場合や中途半端な量(例えば20kgなど)の場合、他の人と組み合わせて仕込むことを伝えています。

伝えて思ったことが、皆さん他所のお米と一緒になるのが嫌な方が多いということです。10kg持ってこられた方が15kgにして持ってきたりという事が多かったです。

ただしお年を召された方の中には

「若い人もおらんくなったけん、少しでいいんよ」

という方もいらっしゃいます。

ご家庭の状況に合わせて持って来ていただければ良いかなと思っています。

お米を計った後、大きな樽に入れ洗米していきます。

よく洗ったお米を冬場は24時間浸漬させてから、麹の仕込みに入ります。

24時間立ったのち、ザルに打ち上げて1時間しっかりと水気をきります。

そして蒸しの作業に入ります。

はちどり味噌では、肉まん等を蒸す蒸し器を使って四角いせいろにお米を入れ蒸しています。

古い蒸し器なので、ライターを使い火を入れています。普通のガスコンロしか使ったことが無かったため、火入れの時はいつもビクビクしていました。種火に火を点けたのち、線を開いて火を入れる構造になっているのですが、点火しない時などあり暴発しないかといつも緊張していました。たまに点検はしてもらいますが、本当に古いものなので今も割と緊張しています。

一度に蒸せる量は、30kg分なので、1回の仕込みで2回蒸しの作業を行います。

蒸しあがった米を、ムロに入れて種付けしていきます。ムロというのは麹菌を繁殖させるための小部屋になります。

はちどり味噌のムロは、約3畳ほどの広さの細長い部屋になっています。幅の狭い側の中央に入口があり、コの字の作業台が置かれています。

コの字の両サイドで作業をする形になります。麹を包む布を広げているので、その上に蒸しあがった米を広げ一定の温度まで下げます。

適温になったところで種麹をまき、麹玉にして保温します。

保温後、菌の繁殖が全体に広がってきた段階で、麹玉をほぐし麹蓋に広げ、2度目の保温を行います。

麹菌が繁殖し終わったら、麹の出来上りです。出来上りの際はタイミングを見て冷まさないと、麹菌によってどんどん加熱されていきます。その見極めも重要なポイントになります。

一連の流れを指示してもらいながら覚えたのが、1年目でした。